ビビッドソウル、ディレクターの合志(ごうし)です。
ビビッドソウルではWebサイトやWebアプリケーション、スマホアプリなどの受託制作を行っております。受託制作におけるディレクション業務とは、開発プロジェクトにおける進行管理、品質管理等を行う業務を指しています。
昨今、OpenAI の Chat GPT や Microsoft の Bing、Google の Gemini(旧 Bird)を始めとした生成系AI の発展により、さまざまなビジネス上の作業が人の手を介さなくなり、多くの職業がなくなるのではないかと言われています。
果たしてディレクターの仕事もなくなるのでしょうか?
この記事ではその問いへの回答を、ディレクションの意味やディレクターの役割、必要スキルと合わせて解説いたします。
企業が必要とするディレクション業務は多様化が進む
はたしてディレクターの仕事はAIに取って代わられるのか?
結論から先に申しますと、それはないと言えるでしょう。その根拠について書いていきます。
インターネットが人々の生活に入り込んで30年近く経ちますが、ここ10年ほどのネット利用の多様化には目を見張るものがあります。特にスマートフォンとSNSが登場し一般に浸透してからは、企業のネット活用の多様化は凄まじい勢いです。
ネット黎明期は企業サイトでの情報公開だけで済んでいましたが、情報取得やコミュニケーションの手段としてネットが人々の生活に深く入り込んだ現在、企業の情報発信は非常に重要かつ多方面での対応が必要となってきました。
一例を上げますと、
- 自社サイトでの商品・サービス紹介
- ECサイトでの自社商品のD2C
- CRMによる顧客との関係性構築
- SDGsへの取り組みなどのCSR情報のPR
- オウンドメディアでの啓蒙
- SNSでの情報発信・ファンの獲得と育成
- 採用サイトやツール利用による従業員獲得
などなど、それはもうやること盛りだくさんです。
ディレクションの範囲の移り変わり
情報発信の多様化に伴い、企業のネット活動を支援する側である「Web制作会社」「システム開発会社」「Webマーケティング会社」に求められる相談事も、自然と多様性を増してきました。
- 企業サイト構築
- 採用サイト構築
- ECサイト構築、グロース支援
- Webアプリケーションのシステム開発
- MA、CRMのサポート
- SEO対策コンサルティング
- SNS運用代行
- オウンドメディア構築、運用支援
などなど、当然こちらもやることが盛りだくさんになります。そんな様々な対応の中で必ず必要とされるポジションはなんでしょうか?
そう、それが「ディレクター」です。さて、ディレクターとはなにをやっている人たちなのでしょうか?
Webサイト、Webサービス開発におけるディレクションの意味
弊社ビビッドソウルは主にITを利用した企業の「デジタルプロダクト開発」を、思いやりをもってお手伝いしている企業です。そのため、主にWebやネット上でのサイト・サービスやアプリ開発におけるディレクションについてお話いたします。
ディレクションの英語での意味
ディレクターとは、ディレクションとはなにか。そもそも英語表現ですのでまずは「Director」や「Direction」という英語を辞書で引いてみましょう。
director【名詞】
取締役、重役、社長、管理職
演出家、映画監督、指揮者
direction【名詞】
方向、道筋、方向性、指導、指示、命令、経営、管理
「director」という単語には上役的なポジションを示す日本語が並びましたが、だいぶ制作現場での役割とは異なっています。英語の「direction」の意味と合わせて実際の業務と照らし合わせてみると、ディレクションとは物事の方針を指し示して管理していく業務、といえます。
制作現場での職種としてのディレクションの意味
一般的な意味合いはそれこそAI にでも聞いていただくとして、ここではWeb開発現場のリアルな現状について述べます。
クライアントワークにおけるディレクターの役割を端的に言うと、
「お客様の課題を抽出し、解決の道筋を設定してチームをゴールに導く役割」となります。
クライアントからは、クリエイティブのクオリティ担保はもちろん事故のない進行と成果達成が求められ、社内では売上・粗利率・稼働効率などの数字的なミッションものしかかります。実際、なかなか多岐にわたって質の高いアウトプットを求められるポジションです。
ディレクターはすべての工程に関わる現場監督
プロジェクトリーダーといえば聞こえがいいですが、制作におけるデザイン・コーディング・開発・検証など実制作作業以外の「すべて」がディレクターの仕事になります。
具体的には以下のような業務があります。
- デザイナーやエンジニアが迷って手が止まらないように仕様を決める
- 無駄な作業をさせないようにクライアントから合意を取る
- アイデアに詰まったデザイナーの相談相手になる
- クライアントの細かい要望を整理してエンジニアに依頼する
- クライアントと交渉して納期を調整する
- 次の手順を先回りして想像して準備する
などなど、それはそれは常に周囲に気を配る仕事なんですよ、実際のところ。
語弊を恐れずに言うとプロジェクトにおける「雑用」と「矢面」のすべてを請け負うことで周囲を円滑に進めるポジションと言えます。
正直「ディレクター」というポジションがなくても、実作業者が「ディレクション」できればプロジェクトは進むんです。実際ディレクション能力の高いデザイナーやエンジニアも存在します。
しかし、こと多様化したWebマーケティングやWeb開発においてはディレクション業務に含まれる知識や対応範囲も多様化してきました。そのため、それぞれのディレクション業務に専門性が求められています。
Webに関わるディレクション業務の移り変わり
多様化・細分化されるディレクターの役割
ディレクション業務の細分化について触れていきましょう。最近 よく耳にするようになったディレクターをさらに専門職に分けた職種をあげてみます。
- Web制作ディレクター
- Web運用ディレクター(いわゆるWeb担)
- コンテンツディレクター
- テクニカルディレクター
- SEO運営ディレクター
- UI/UXディレクター
- ECサイト運営ディレクター
- メディア運営ディレクター
ちょっと指折っただけでこれくらいはでてきますね。最近ではさらに「AIディレクター」や「プロンプトディレクター」なんて役職も現れてきました。全部とは言わないまでも複数の役割をこなしてるディレクターも多いと思います。
ディレクション、プロデュースの違い
一般的に言われているプロデュースとディレクションの違いを「プロデューサー」「ディレクター」という役割の面から言語化してみましょう。
プロデューサー:プロジェクトの成果にコミット。最終的なコストに見合う成果を提供することを求められる
ディレクター:プロジェクトの制作物の品質と納期にコミット。関わるスタッフの進行と制作物のクオリティの担保が求められる
なににコミットする役割なのか、という線引をすると考えやすいですね。映画製作で例えると、映像作品をつくるのがディレクター(監督)でその映画で売上を立てるのがプロデューサーです。某有名アニメ制作会社のお二人の関係が浮かびますね。
実際のところは「プロデューサー」というポジションとの垣根も曖昧で、業界や所属企業によって指している業務内容が違ったりするのでこれまた注意が必要です。チームビルディングの際には求めるスキルや役割分担について部署内やクライアントと具体的にすり合わせておくことも大切です。
Web界隈のディレクターに必要なスキル
ディレクターのスキル、つまりいわゆる「ディレクション能力」と呼ばれるものにはどんなものがあげられるでしょうか?
ここでみなさんもよくお使いの AI Chat に実際に聞いてみました。(各生成AIの回答は2024年2月時点の回答例です)
ここでは、代表して以下の3つのAIに、同じ質問をしています。
- Google Gemini
- Microsoft Copilot
- OpenAI ChatGPT
AIに聞いてみたディレクターのスキル
正直もう少し回答がバラけるかなと予想していたのですが、3つともほぼ同様の内容でしたので、ここでは名前が変わったばかりで注目株のGooglg Gemini の回答を紹介します。
プロンプト「Webディレクターに必要なスキルはなんですか?」
回答
1. コミュニケーションスキル
Webディレクターは、クライアント、デザイナー、エンジニアなど、様々な関係者とコミュニケーションを取る必要があります。 それぞれの立場や考えを理解し、円滑なコミュニケーションを取ることが重要です。
ヒアリングスキル: クライアントの要望を正確に聞き取り、潜在的なニーズを引き出す
説明スキル: 自分の考えや企画を分かりやすく説明する
折衝スキル: 関係者の意見を調整し、合意形成を図る
傾聴力: 相手の話を最後まで聞き、理解しようとする
2. マネジメントスキル
Webサイト制作プロジェクトは、複数の工程が同時進行で進みます。 スケジュール管理、予算管理、品質管理など、プロジェクト全体を管理するスキルが必要です。
スケジュール管理: プロジェクト全体を俯瞰し、各工程のスケジュールを設定・管理する
予算管理: 予算内に収まるように、費用を計画・管理する
品質管理: 制作物の品質を検査し、基準を満たしていることを確認する
リスク管理: プロジェクトに潜むリスクを事前に察知し、対策を講じる
3. Web制作に関する知識
Webサイト制作の基本的な知識が必要です。 Webデザイン、Webプログラミング、SEO、Webマーケティングなど、幅広い知識を身につけることが重要です。
Webデザイン: デザインの基礎知識、配色、レイアウト、 типоグラフィなど
Webプログラミング: HTML、CSS、JavaScriptなどの基礎知識
SEO: 検索エンジン最適化の知識
Webマーケティング: Webサイトの集客・分析の知識
4. 企画立案力
クライアントの課題を解決し、目標達成に貢献できるようなWebサイトを企画・立案する必要があります。
課題分析: クライアントの課題を明確にする
コンセプト策定: Webサイトのコンセプトを策定する
企画書作成: 企画内容をまとめ、企画書を作成する
5. 問題解決能力
Webサイト制作プロジェクトは、様々な問題が発生します。 問題を迅速かつ的確に解決する能力が必要です。
分析力: 問題の原因を分析する
解決策の検討: 複数の解決策を検討する
意思決定: 最適な解決策を選択する
実行力: 解決策を実行する
6. その他
上記以外にも、Webディレクターには、以下のようなスキルが求められます。
リーダーシップ: チームをまとめ、プロジェクトを成功に導く
柔軟性: 状況に合わせて、臨機応変に対応する
学習意欲: 最新の技術やトレンドを常に学ぶ
向上心: 常にスキルアップを目指す
こうして言語化してみるとなかなかのスーパービジネスマンですね、ディレクターって。 最後の柔軟性・学習意欲・向上心なんてスキルというかもはや性質(たち)です。
ディレクタースキルの習得方法
ちなみに Gemini くん、具体的なスキルの身につけ方としてあげてくれた方法がこちら。
Webディレクターに必要なスキルは、独学で学ぶこともできますが、専門スクールに通ったり、Web制作会社で実務経験を積んだりする方法もあります。
by Gemini
なかなか突き放してきた感のある回答ですが、筆者自身の経験から言って正直それほど的外れではありません。
プログラミングやデザインと違ってディレクションスキルを上げるスクールやセミナー、参考になる書籍って少ないのが実情です。そうすると「独学」「実務経験」っていう元も子もないような回答になってしまうんですね、実際のところ。
WebディレクションもAIと進める時代
さてAIに取って代わられることはないと述べましたが、AIを活用して効率化されるディレクターの作業は多々あります。実務で利用できるディレクションの工程をあげてみます。
- 企画のアイデア壁打ち
- 企画書の台割作成
- クライアントの業界調査
- サイトマップの作成
- TDK(title,description,keyword)の草案作成
- 画面ごとに必要なコンテンツ草案作成
- SEO対策原稿作成
ファクトチェックが必要な部分はありますが、作業面で大いに作業負荷や時間を軽減することができます。AI社会において利用しない手はないのです。
WebデザインやコーディングでのAI活用
ではデザインやコーディングの実制作においてのAI活用はどうでしょうか?
- WF(ワイヤーフレーム)の作成
- WFからデザインの生成
- デザインからのオートコーディング
- プロンプトからの高品質な画像・イラストの生成
- ビジネスモデルプロンプトからのWebサイト自体の生成
- プロンプトによるCV効率の良いLPデザイン作成
- 動画自動編集
完璧ではないものの、無視はできないクオリティレベルですし、むしろたたき台として有効で積極的に作業フローに取り入れて効率化を図るべきレベルです。
特にAIによるオートコーディングの流れは加速していて、利用しているかどうかでエンジニアの作業効率に3倍くらい差がついていると実際の現場で感じています。
正直、プログラマー・コーダーからみればヤバいレベルのアウトプットですね。
AIに置き換えられないための仕事術 ディレクター編
これだけの工程が「技術」「ノウハウ」を学習したAI に代替されていく中で「ヒト」がディレクションしていくべきことはなにが残されていくでしょうか?
奇しくも、AI自身がその答えを提示しているとおり「コミュニケーションスキル」、つまりは「人間力」そのものが重要になってくるのです。
- いくつもの可能性から進むべき方向性を選択する判断力
- クライアントから話を引き出す傾聴力
- 会議の中で課題を抽出し具体化するファシリテーション力
- スタッフの意見を取捨選択して決断する責任感
- タスクを分解してスタッフに振り分ける調整力
- それぞれのタスク進捗の管理能力
- 進行を先回りしてリスクを予想する想像力
このような人と人との間に関わって繋げていく力こそ、今後ディレクターにとってますます大切な能力になってきます。
求められるのは思いやりあふれるディレクション
これらがうまくできるディレクターに共通していることがあります。
それは、常に周囲に目や気を配り、思いやりをもってクライアントやスタッフと接して、いざというときに手を貸してもらえるという信頼関係を構築しているということです。
言い換えると、
- 専門性に長けたスタッフにいざというときに助けてもらえる関係性の構築力
これが重要です。
周囲のスタッフに対して、
- 案件が重なって稼働が混んでいないか
- 無茶な要求を押し付けられてないか
- 遅くまで残業が続いてモチベーション下がってないか
- さらには体調を崩したりしていないか
- 仕様が決まらず無駄かもしれない作業を強いられてないか
- 好みの案件、苦手なクリエイティブはなにか
などをちょっとした雑談混じりに把握しておく。果ては、趣味趣向や家族構成なども把握しつつ、なにかにつけ声をかけ、差し入れやお土産を日頃から共有し、がんばってもらったら好みのブ◯ボンやドリンクの1本も差し入れる。
(ホワイト◯リータ派ですがなにか)
そんな「思いやり」こそがディレクションスキルの根幹ではないか。
「思いやり」こそがAI 時代が来たとしても「ヒト」に求められ続ける「スキル」「バリュー」なのではないか。
かなり、本気でそう考えて、日々取り組んでいます。
ビビッドソウルは思いやりのものづくりを提供いたします
インターネット黎明期から一貫してWeb制作の現場でキャリアを重ね、企業サイトのブランディングや大規模ECサイトのリニューアル案件など多くの受託案件に関わる。ディレクションを題材としたセミナー講師実績多数。著書に「現場のプロが教えるWebディレクションの最新常識 知らないと困るWebデザインの新ルール2(MdN)」(共同執筆)がある。